株式会社ビックカメラ
”新しい顧客体験”の創出に向けて
ビジネスを再構築
DX を加速するビックカメラのビジョン
2022
内製化と AWS 活用によって変化し続ける顧客の期待に俊敏に対応。
クラウドにとって重要なことは、市場での勢いと安心感、基盤そのもの安定性です。
私にいわせれば、AWS 以外を選ぶ理由が見当たりません
野原 昌崇 氏
株式会社ビックカメラ
執行役員デジタル戦略部長
他の小売業に比べて DX が効きやすい家電業界
「進化し続ける “こだわり” の専門店の集合体」を企業理念に掲げ、全国に 46 店舗を展開するとともに、EC の運営にも取り組む株式会社ビックカメラ。子会社の株式会社コジマと合わせ、家電小売業界で大きな存在感を放っています。2022 年 6 月には「家電小売業初のDX 宣言」を発表。店舗と EC をシームレスに結合させることで、顧客体験を向上させる OMO※1戦略を推進しています。
これを加速するために取り組んでいるのが、グループ全体の DX です。IT ベンダー依存を脱却したシステム開発を実現するため、デジタル戦略を推進するエンジニアを社内に抱えた「内製化」へと、大きく舵を切りました。2022 年 9 月にはグループ全体の DX を司る IT 戦略子会社を設立。ここで数百人規模の IT エンジニアを採用していく予定です。
「もともと家電小売業界は”複合寡占”と”接客販売重視”によって、閉鎖的な文化のまま現在まで来てしまいました」と語るのは、ビックカメラの執行役員 デジタル戦略部長で、新たな IT 戦略子会社の社長に就任した野原昌崇氏です。野原氏は DX も他の小売業に比べて未開拓であり、それだけに”DXが効きやすい”状況なのだと説明します
「当社は黒字であるものの直近は苦戦傾向にあり、現在マーケットで最も変革圧力にさらされているといっても過言ではありません。そこで全社を挙げて DX にコミットし、”新しい顧客体験”の創出によって巻き返していこうと考えています」(野原氏)
そのための基盤として、野原氏はクラウドを全方位で活用していく方針だといいます。これを活用できる人材も社内にすでに 120 名を揃えており、新会社では 5 年以内に 200 名を超える増員を実現していくといいます。
「エンジニアを IT ベンダー経由で確保すると年収の 3 倍以上のコストがかかりますが、直接雇用ならそのコストを抑制できます。しかし、最大の狙いはコストではなく俊敏性を高めることです。スピーディな顧客体験の変革には内製化が欠かせません。そしてこの差別化領域にリソースを集中するには、クラウドの積極的な活用が不可欠です」(野原氏)
クラウド基盤に求めたのは 無色透明で空気のような存在
ビックカメラのクラウド活用は、大きく 2 本立てで進められる計画です。まずオンプレミスシステムの中で SaaS に置き換えられるものは、できる限り SaaS へと移行。直接 SaaS 化することが難しいものや、そもそも SaaS には適さないシステムは、まず IaaS へとリフトしてから、必要に応じて SaaS に移す方針です。この IaaS 基盤として全面的に採用されているのが AWS です。その理由を野原氏は次のように説明します。
「AWS は小売業のニーズから生まれたものであり、事業会社の痒いところに手が届くように作られています。また私自身は個人的にアマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏に対してビジネスパーソンとして敬意を抱いており、彼が生み出した AWS をぜひ徹底的に使ってみたいという想いもありました。アマゾンはビックカメラの競合ではないのかという意見もありますが、それが AWS を使わない理由にはなり得ません。クラウドを採用するうえで重要なのは、この市場での勢いと、長期的にサービスを継続してくれるだろうという安心感、そして基盤そのものの安定性です。AWS はクラウド市場で最も高いセグメントシェアを維持し続けており、基盤そのものの高い信頼性も設計段階から組み込まれています。私にいわせれば、汎用的な IaaS として AWS 以外を選ぶ理由が見当たりません」(野原氏)
その一方でクラウドの世界では、特定機能の優位性に着目した比較は、大きな意味をなさないと指摘します。新機能の追加や既存機能の改善にクラウドベンダーが日々しのぎを削っているからです。むしろそれ以上に重視すべきなのは「無色透明で空気のような基盤」であることだと述べます。
「コスト面を見ても、AWS は最もリーズナブルであり、自ら継続的に価格を下げています。また大規模に使うほど単価が下がるといった、スケールメリットも享受できます。そのため 汎用的なIaaS はすべて、AWS に集約すべきだと判断しています。実際に複数のクラウド開発者にも意見を聞いたところ、コストと拡張性の両面で AWS が最もリーズナブルな選択だという意見が大多数を占めました」(野原氏)
すでに大規模な基幹システムを AWS へ移行するプロジェクトも進んでおり、2023 年秋には新基幹システムとしてリリースされる計画です。これと並行して複数の社内システムが、AWS へとリフトされることになっています。
CCoE の立ち上げや人材育成に AWS ITX パッケージも活用
AWS の本格的な活用に向け、ビックカメラは AWS が提供する「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ(ITX パッケージ)2.0」も導入しています。ITX パッケージは、日本のお客様から寄せられたさまざまな声に応えるため、2021 年 4 月に日本独自のプログラムとしてリリースされたものです。
ITX パッケージ 2.0 の内容は、大きく 3 つの柱で構成されています。
第 1 はクラウド移行決定前に実施する「評価」。ここではクラウド化の TCO を評価する「クラウドエコノミクス」、CO2 排出削減量試算、マイグレーションが可能な状況かどうかを評価するアセスメントが含まれます。
第 2 はクラウド移行決定後の「準備」であり、クラウド化を推進する組織である CCoE※2の立ち上げ支援や、人材支援、パイロット移行実施支援、体験型ワークショップが含まれます。
そして第 3 が「移行」であり、CO2 排出量モニタリングや分析、クラウド化で不要になった IT 機器の買い取りなどが行われます。
「ITX プログラムがなくても AWS は採用していましたが、これも活用することで経営層への説明が容易になりました」と野原氏は語ります。
事前に TCO を定量的に評価したことで、コストメリットの観点から AWS 採用を納得してもらいやすくなったからだといいます。
ビックカメラにおける ITX パッケージ 2.0 の活用はまだ始まったばかりです。今後は AWS のコンサルタントが参画し、CCoE の立ち上げや人材育成の支援が進められる計画です。
事業会社の世界をダイレクトに変革 野原氏が新たな IT 戦略子会社で求める人材
野原氏が新たな IT 戦略子会社で求める人材像とは、次のようになります。
「新会社のミッションは、ビックカメラをはじめとする事業会社と並走しながら、そこで必要なシステムを自ら作り上げていくことにあります。私たちはデジタル技術の”シーズ側"として新たな提案を積み上げていきながら、事業会社のビジネスを加速していきたい。このようなビジョンに共鳴し、一緒に世界を変えていきたい人に、ぜひ参画していただきたいと考えています。『もうクライアント企業の言いなりになってシステムを作るのは飽きた、自分でシステムを提案して作り上げたい』という人には、最適な職場になるはずです」
このような人材が自在に活動し、新しいことにチャレンジしやすいように、この新会社では休日のルールや給与体系なども、本体のビックカメラとは異なるものを採用しているといいます。
「もちろんその最終的な目的は、お客様の体験をどれだけ快適に、楽しいものにするかです。小売業にとっては顧客体験こそがすべて。刻々と変わり続けるお客様の期待に対して、先回りしながら対応していくために、内製化とクラウド活用を進めています。つまり私たちは、自分たちのビジネスにとってアタリマエのことを、アタリマエに実現しようとしているのです」(野原氏)
カスタマープロフィール:株式会社ビックカメラ
- 代表取締役社長: 秋保 徹 氏
- 社員数: 連結 9,571 名 単体 4,552 名(2022 年 8 月 31 日時点)
- 事業内容: 家電製品などの販売
実施施策
- 基幹システムをはじめとする複数システムを AWS へと移行
- DX を推進する組織として新たな IT 戦略子会社を設立
- CCoE 立ち上げや人材育成に ITX パッケージも活用
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