構築、テスト、検証を含めてわずか 3 カ月で IVR システムをサービスインすることができました。
Amazon Polly による音声読み上げについても違和感のない日本語で案内ができています。 

 

尾崎 欧州 氏 株式会社イープラス システム部 システム開発グループ エキスパート

チケット販売サイト『e+(イープラス)』を運営する株式会社イープラス。同社は抽選方式で販売するチケットの当選結果の自動音声応答(IVR)システムにコールセンターソリューション Amazon Connect を採用。人工知能によるテキスト読み上げサービス Amazon Polly と組み合わせ、3 カ月の開発期間でサービスインしました。従来の IVR システムと比べて初期導入、運用、電話応答のいずれにおいても 90% 以上のコスト削減効果を上げています。


 

ライブ・エンタテインメントをもっと「いろんな人へ」もっと「身近に」もっと「楽しく」を理念に、プレイガイド、イベント、メディアの 3 事業を展開するイープラス。会員数 1,100 万人を超えるチケット販売サイト『イープラス』を筆頭に、近年はライブカフェ『eplus LIVING ROOM CAFE&DINING』やオウンドメディア『SPICE』の運用、舞台・美術展・展覧会のチラシやクーポン情報を網羅したアプリ『チラシステージ』『チラシミュージアム』など、顧客への接点を拡大しながらビジネスを展開しています。

これらのビジネスを支える IT 環境については、2014 年より全社のインフラ基盤を AWSに移行。基幹系システムなど一部を除き、会員管理システム、周辺系のサブシステム、新規に立ち上げるサービス基盤などをすでに AWS 上で稼働中です。「俊敏性に優れ、サーバーの台数やリソースを柔軟に拡大・縮小できる AWS は、当社のトラフィック特性に合っていると思います。」と語るのは、システム部 システム開発グループ エキスパートの尾崎欧州氏です。

着々とクラウドシフトを進めるイープラスが、コールセンターソリューションの Amazon Connect を導入するきっかけとなったのは、オンプレミス環境で構築していた IVR システムのリプレースでした。一部の抽選方式チケット予約販売では、申込者が電話で抽選結果を確認できる仕組みになっており、結果の応答は自動音声で対応してきました。

抽選結果の電話確認期間は数日間に限られるため、IVR システムは 24 時間対応しています。ただし、アクセスは発表開始直後の短時間に集中するため、急激なトラフィックの増加にも対応できなければなりません。次回のチケット販売開始に向けて、従来のサービスレベルを維持しながら運用効率の高いシステムを、短期間で開発する必要がありました。  

これらの要件に対応するソリューションを模索していたイープラスは、2017 年に AWS シドニーリージョンでリリースされたばかりの Amazon Connect に注目。人工知能を活用した文章読み上げサービス Amazon Polly と組み合わせ、クラウドによる IVR システムの構築を検討しました。2017 年 10 月から約 1 週間で Amazon Connect の基本動作と Amazon Polly との連携を検証した同社は、システム構築の容易さや違和感のない日本語応答などに手応えを得て採用を決めました。

「Amazon Connect を選んだ理由は、当社内ですべての開発ができることでした。他に検討した IVR システムの場合、開発や改修の一部をベンダーに依頼しなければならず、相手側の開発や調整期間に左右されるリスクがありました。その点、Amazon Connect なら自社のエンジニアで対応し、開発全体を限られた期間内でコントロールできます。コンタクトフローも作りやすく、AWS で稼働しているシステムとの連携も容易であることから、作業負荷も削減できると考えました。」(尾崎氏)

新 IVR システムの開発には 2017 年 11 月より着手し、構築作業を 1 カ月で完了。その後の 2 カ月でテストと調整作業を実施し、チケット予約販売が始まる 2018 年 2 月に本稼働を開始しました。テスト工程では、課題を抽出して改善を繰り返す PDCA サイクルを何度も回すことで、高品質なシステム開発を実現。開発は AWS の経験が豊富なオフショアチームに加え、AWS のサポートサービスも適宜活用しながら進めました。

「音声自動応答という使い方で Amazon Connect を商用環境に導入する日本企業は当社が初めてということもあり、AWS の技術担当者からは可用性の向上やアクセスピーク時のスケール対応などに関する助言を受けました。テスト中も細かい部分でサポートサービスに質問をしましたが、迅速に回答をいただき開発を停滞させることなく進めることができました。」(尾崎氏)

新 IVR システムでは、利用者からの電話を Amazon Connect のコンタクトフローを経由して受け付け、サーバーレスコンピューティングの AWS Lambda によって処理を実行します。さらに外部の申込情報管理システムのリレーショナルデータベース Amazon RDS(MySQL)と連携して抽選結果を参照し、Amazon Polly を使って自動音声で読み上げる仕組みです。

サービスイン以降、トラブルは一度も発生することなく順調に稼働しています。電話が集中する抽選結果発表直後も、オンプレミスで稼働していた従来の IVR システムと同等のサービスレベルを維持できています。

「当社で構築した IVR システムとしては 3 世代目となりますが、これほどスムーズに立ち上がったのは今回が初めてではないかと思っています。オンプレミス型の前システムではハードウェアの故障やコンタクトフローのバグなど何かしらの問題があり、電話がつながらなかったり、途中で切れたりすることがありました。Amazon Connect に切り替えてからは、本稼働から半年が経った現在まで、クレームも発生していません。」(尾崎氏)

音声の自動読み上げに関しても、読み方の難しい固有名詞などはあらかじめ固定音声を割り当てるなどして工夫したこともあり、違和感のない日本語で案内ができているといいます。  

Amazon Connect の導入で、高額な IVR 機器を自前で保有する必要がなくなり、機能開発費のみとなった初期導入コストは、オンプレミスと比べて 95% 削減されました。システム維持費もシステム利用料金のみで 90% の削減、マスタメンテナンス等の人件費でも 95% の削減を実現しています。システム利用料金もクラウドならではのオートスケールによって使った分だけとなり、トラフィックが短時間に集中する電話応答サービスで、コストの最適化が実現しました。「AWS を導入しなかった場合、パフォーマンスは維持できたとしても、コストをここまで抑えることはできなかったでしょう。」(尾崎氏)

開発が 3 カ月で終わったことも大きなインパクトがありました。オンプレミスならサーバーの手配から設営まで約 3 カ月は必要なところ、Amazon Connect なら Web から申し込んで電話番号を取得するわずかな時間しかかかりません。

「今回のプロジェクトは、当社のシステム部門にとって超短期導入のモデルケースとなりました。この経験とノウハウを次回以降の開発案件に活かしていきます。」(尾崎氏)

今後も AWS を新サービスや業務システムに活用していくイープラス。システム間の連携をシンプルにするために、API Gateway と AWS Lambda を使った API 基盤の構築に関する構想も進んでいます。

 尾崎 欧州 氏


簡単に使えるクラウド型コンタクトセンター Amazon Connect が企業でどのように役立つかに関する詳細は、Amazon Connect の詳細ページをご参照ください。