Hess Corporation の導入事例

2014 年

Hess Corporation は世界をリードする独立系エネルギー会社で、原油と天然ガスの探査と生産に従事しています。Hess Corporation は 1933 年に創立され、多くの国々に支社があります。本社をニューヨークに置き、支社はヒューストン、テキサス、マレーシアのクアラルンプールにあります。

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この特定の取り組みの推進力となったのは売却でした。しかし、このプロセスを経験したことで、当社は AWS クラウドで何ができるかを理解することができたのです。将来、当社は、当社のオンプレミス設備の代替として、クラウドソリューションを構築する見込みです。」 

Jim McDonald
Hess Corporation アーキテクト部門長

課題

Hess は戦略上、財政上、その他の理由を鑑みて、事業の買収および売却を行っています。このプロセスは、効率的に管理されないと組織のすべての部分に影響を及ぼし、組織や事業の中断を引き起こす可能性があります。2013 年、Hess は事業を合理化し、自社のエネルギーの探査と生産 (E&P) に力を入れることを決定しました。このプロセスの一環として、Hess は 2013 年 3 月に、小売、エネルギーマーケティング、ターミナルを含む、自社のダウンストリームビジネスを売却する計画を発表しました。買収者のためにビジネスシステムやデータの分割を予測して、Hess の IT 部門では 2013 年 7 月にアマゾン ウェブ サービス (AWS) での作業を開始し、2014 年 1 月までにその環境を運用および実稼働させる契約を締結しました。 

アマゾン ウェブ サービスが選ばれた理由

「当社は、クラウドテクノロジーおよび Infrastructure as a Service (IaaS) などを取り入れていましたが、この売却の発表は、その普及を高める完璧な機会となりました」とリードアーキテクト Jim McDonald 氏は述べています。「当社は、問題なく機能し運用できるインフラストラクチャを買収者に提供する義務がありました。また Hess に対しては、インフラストラクチャが法的にも物理的にも迅速に処理できるように保証する義務がありました。クラウドを使用することで、これらすべての要件を満たすことができ、当社はその成果に驚嘆したのです。」

2013 年の初め、当社の IT 部門は AWS Partner Network (APN) のアドバンストコンサルティングパートナーである Nimbo とクラウドに関するディスカッションを開始しました。Hess は Nimbo と協力してクラウドプロバイダーの候補リストを作成し、最終的にアマゾン ウェブ サービス (AWS) を選択しました。

「当社には、アプリケーションの再設計を行う時間がありませんでした」と McDonald 氏は言います。「AWS では、Windows Server 2003、幅広い SQL Server データベースと Oracle データベース、および堅牢な Citrix 環境で、当社のレガシー 32 ビットアプリケーションをサポートすることができました。」

買収に向けたインフラストラクチャの準備

AWS へインフラストラクチャを移行する準備を行うため、Hess および Nimbo では、次の 2 つの側面を持つアプローチを開発し、並行して実装しました。

  • 移動対象のサーバー、オペレーティングシステムのレベル、プロセッサとメモリ要件、ストレージ構成、およびバックアップとリストア要件を特定した詳細なインベントリ
  • 購入者に移行するアプリケーション、統合ポイント、パフォーマンス要件、リモートアクセス、ディスクの消費量と拡大を特定したアプリケーションレビュープロセス

「インフラストラクチャに何らかの変更を加えることで移行が困難となる事態は避けたいと考えていました」と McDonald 氏は説明します。「可能な限り、オンプレミス環境と同じ仕様で AWS のインスタンスを構築しました。」

Nimbo の共同設立者であり COO である Ira Bell 氏は、「当社は、AWS こそが組織全体をパッケージ化し、買収者に引き渡す概念を具現化することができる手段であると確信しました」と述べています。当社は、まるで生き物を扱うかのように、エネルギーマーケティングビジネスを処理するための作業を行いました。生き物であるかのようなエネルギーマーケティングビジネスを、エスクロータイプの環境または中立ゾーンと見なされる環境に配置する方法を検討するため多くの時間を割きました。移行時にビジネスが中断されることなく、正常に運営されるようにすることが極めて重要でした。

Hess では、7 月に一連のパイロットアプリケーションを選択し、AWS プラットフォームのベースインフラストラクチャの構築に着手しました。迅速にこの開発を完了し、上層部からの賛同を得た後、チームは数週間を費やして、その他のアプリケーションポートフォリオの詳細情報を収集し、セキュリティ要件について Nimbo に説明しました。

クラウド環境で操作することは、Hess にとって組織的、文化的な移行となり、アプリケーションチームの同意を得ることが大変重要でした。「AWS プラットフォームの機能ですべてのユーザーがより快適に作業できるようにすること、そして、このアプローチを信頼することが極めて重要でした」と McDonald 氏は述べています。Nimbo では、普段 AWS を利用したことのないアプリケーション開発者向けに非公式セッションを開催しました。このセッションは、主要なクラウドテクノロジーと機能を学習する機会になりました。

クラウドへのシームレスな移行

Hess は、2013 年 8 月、AWS で Amazon Virtual Private Cloud (Amazon VPC) を使用して、オンプレミスのデータセンターを接続するための VPN 接続を確立しました。「Amazon VPC は複数のサーバーを適切なサブネットに論理的に分割し、当社が必要とする方法でネットワーク構成を適用できる点で、当社にとって優れた手段でした。

企業のニーズの変化とともに、より一貫性のあるネットワークパフォーマンスを得るため、Hess は 1 Gbps の接続を備える AWS Direct Connect に切り替えました。「当社の移行時のデータレプリケーション要件は、かなり複雑なものでした」と McDonald 氏は述べています。「すべては期待どおりに機能しており、当社のサポートチームは、当社のデータセンターで使い慣れたこれまでと同じツールを使用して、サーバー管理を行うことができました。クラウドへの移行は基本的に、当社のネットワークの拡張でした。」

Hess では、米国東部 (バージニア北部) リージョンで約 300 台のサーバーを AWS に移行しました。Amazon Elastic Block Store (Amazon EBS) (Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) に添付されている) では、ほぼ 500 TB のデータのブロックレベルのストレージが提供されています。保存用のプロビジョンド IOPS ボリュームを EBS 向けに最適化済みのインスタンスと併用することで、より厳しい IO デマンドで、一貫性のある低レイテンシーのパフォーマンスが提供されます。極端な事例では、プロビジョンド IOPS ボリュームが、パフォーマンスを向上させるために RAID アレイとして設定されていました。

また、この環境は、災害対策 (DR) 用の環境の状況を改善するため、複数のアベイラビリティーゾーンにまたがっていました。「契約上 DR 機能を提供する義務があるため、当社では、買収者が DR プランのベースとして使用できるように、2 番目のアベイラビリティーゾーンに開発環境を配置しました」と McDonald 氏は述べています。

オンプレミス環境では、Hess はテープバックアップシステムを使用していました。AWS のチームはすべてのボリュームのスナップショットを作成し、データの夜間バックアップ用に Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) にそれらを保存するプラットフォームを設定しました。スナップショットは、ファイルの取り出しプロセスまたはロールバックプロセス用のインスタンスに添付されます。「スナップショットは、サーバー障害およびデータの誤った削除や破損の両方に対応できます」と McDonald 氏は言います。「当社は、Amazon EC2 コンソール、Amazon EC2 コマンドラインインターフェイス (CLI) ツール、または API を使用して、同一リージョン内から他の AWS リージョンへスナップショットを簡単にコピーできる機能を利用しました。スナップショットコピーを使用して、データのバックアップを作成し、新しい Amazon EBS ボリュームを作成して、Microsoft Windows Server 2003 および Windows Server 2008 で実行される標準の Amazon Machine Images (AMIs) を作成しました。

Hess では、SQL Server 2000、SQL Server 2005、および SQL Server 2008 の環境で Standard および Enterprise バージョンを含む、複数のバージョンの Microsoft SQL Server を使用していました。SQL Server Database と Oracle Database のバックアップを作成するため、まず、ネイティブのデータベースバックアップツールを使用して、 Amazon S3 にデータを保存し、その後、長期アーカイブ用の Amazon Glacier に保存しました。

Amazon CloudWatch は、クラウドリソースとアプリケーションをモニタリングしています。Hess のオンプレミスのインフラストラクチャには、ロードバランシング用の NetScaler デバイスとアプリケーションファイアウォール管理のための F5 が含まれています。Hess は AWS Marketplace を使用して、クラウドでオンプレミスのデバイスを仮想化しました。

環境を迅速に構築する柔軟性

エネルギーマーケティングの IT 環境は、約 50% が市販ソフトウェアで、50% がカスタムアプリケーションで構成されています。ほぼすべてのカスタムアプリケーションは、Microsoft .NET Framework を使用して開発されています。アプリケーション (カスタムアプリケーションおよび市販アプリケーションの両方) の多くは、必要に応じて、SQL Server Database か Oracle を使用しています。アプリケーションの約 70% はウェブベースで、残りは「シッククライアント」(つまり、ネットワークに接続されているコンピュータで実行されている) です。

Hess は、環境を迅速に作成および構築し、フェイルファスト (エラーの早期検知) が可能となるように、AWS プラットフォームを活用しました。「思い通りに作動しないことがあっても、その部分を分解して、数時間または数日後には再構築することができます」と McDonald 氏は述べています。「多数のサーバーを迅速に構築できる柔軟性は、当社にとって非常に大きなメリットがあります。」

Hess は、実稼働環境に必要なサーバーの半数を構築し、残りの半分はコードを使用してそのクローンを作成しました。Nimbo はこのアプローチを使用して 1 日で 100 個のサーバーを構築することができました。「これは、当社のオンプレミス環境では考えられないことでした」と McDonald 氏は言います。「ボタンをワンクリックするだけで 100 個のサーバーを構築できることは、本当に素晴らしいの一言に尽きます。」 Bell 氏は、「Nimbo における当社の主な強みは、DevOps の手法です。」とコメントしています。当社には AWS などの有用なプラットフォームを実際に活用できるリーダーが何人かいます。

AWS クラウドを実行することで、Hess は長期間にわたる調達およびライセンス許諾プロセスを必要とすることなく、Microsoft Windows および SQL Server をインストールし、仮想アプライアンスを容易に作成できるようになりました。「このタイプのプロジェクトには、常に課題があります」と McDonald 氏は述べています。「AWS 環境では、特定の問題を解決する際に、複数の異なる方法から選択できます。その柔軟性が当社の成功の鍵となりました。」

AWS 上のエネルギーマーケティングインフラストラクチャ

利点

「このプロジェクトは市場投入への迅速化に関するもので、6 か月で AWS クラウドへの移行が完了しました」と McDonald 氏は述べています。「物理サーバーを使用している場合は少なくとも 2 倍の時間がかかりました。」

Hess は長期にわたるサポート契約を締結することなく、インフラストラクチャを新しい所有者にできる限りシームレスに移行する必要がありました。Hess では、2014 年 1 月にエネルギーマーケティングの実稼働環境として AWS を使用し始め、この環境を 2 月に買収者に移行しました。

セキュリティリスクとパブリック環境へのアクセスを最小限に抑えるため、Hess では AWS Multi-Factor Authentication (MFA) デバイスを使用して認証を行っています。買収者が AWS アカウントを設定し、認証情報が送信された後に、Hess がデバイスを引き渡します。「移行は 30 分の会議の間に実行できます」と McDonald 氏は述べています。「とても簡単です。」

「実際、Hess と Nimbo はクラウドに関して見てきたどの使用事例よりもユニークな方法で、AWS を活用していました」と Bell 氏は述べています。「当社は、よくまとめられたシンプルなプロセスにより、買収者への引き渡しを完了させることができ、同時にビジネスも期待どおりに継続させることができました。私は、Hess および AWS のソートリーダーシップに非常に感銘を受けましたし、彼らが Nimbo にこの優れたクラウド実装にかかわる機会を与えてくれたことを非常に嬉しく思いました。」

買収の成功により、Hess ではクラウドサービスが有用であることが広く知られるようになりました。「当社は Hess に、AWS を導入することにより可能になる操作についてデモンストレーションを行いました」と McDonald 氏は述べています。「この特定の取り組みの推進力となったのは売却でした。しかし、このプロセスを経験したことで、当社は AWS クラウドで何ができるかを理解することができたのです。将来、当社は、当社のオンプレミス設備の代替として、クラウドソリューションを構築する見込みです。」


Hess Corporation について

Hess Corporation は世界をリードする独立系エネルギー会社で、原油と天然ガスの探査と生産に従事しています。Hess Corporation は 1933 年に創立され、多くの国々に支社があります。


使用されている AWS のサービス

Amazon EC2

Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) は、安全でサイズ変更可能なコンピューティング性能をクラウド内で提供するウェブサービスです。開発者がウェブスケールのクラウドコンピューティングを簡単に利用できるように設計されています。

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Amazon S3

Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) は、業界をリードするスケーラビリティ、データ可用性、セキュリティ、およびパフォーマンスを提供するオブジェクトストレージサービスです。

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Amazon VPC

Amazon Virtual Private Cloud (Amazon VPC) では、AWS クラウドの論理的に分離されたセクションをプロビジョニングし、お客様が定義した仮想ネットワーク内の AWS リソースを起動することができます。

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Amazon Glacier

Amazon S3 Glacier と S3 Glacier Deep Archive は、安全性と耐久性に優れ、きわめて低コストの Amazon S3 クラウドストレージクラスで、データのアーカイブや長期バックアップに使用できます。

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AWS Direct Connect

AWS Direct Connect はお客様の設備から AWS への専用ネットワーク接続の構築をシンプルにするクラウドサービスソリューションです。

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Amazon CloudWatch

Amazon CloudWatch は、DevOps エンジニア、開発者、サイト信頼性エンジニア (SRE)、および IT マネージャーのために構築されたモニタリング/オブザーバビリティサービスです。

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Amazon EBS

Amazon Elastic Block Store (EBS) は、Amazon Elastic Compute Cloud (EC2) と共に使用するために設計された、スループットとトランザクションの両方が集中するどんな規模のワークロードにも対応できる、使いやすい高性能なブロックストレージサービスです。

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AWS Marketplace

AWS Marketplace のデジタルカタログには何千ものソフトウェアが独立ソフトウェアベンダーから出品されています。AWS で動作するソフトウェアの検索、テスト、購入、デプロイが簡単に行えます。

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