Liberty Mutual が、AWS でサーバーレス化することにより、コストを削減し、市場投入までの時間を短縮
2021 年
グローバルなデジタル企業になるという目標を達成するために、大手保険会社である Liberty Mutual は、顧客中心主義、俊敏性、クラウドネイティブ開発というデジタルトランスフォーメーションの 3 つの主要分野に焦点を当てました。そのために、同社はサーバーレスファーストのアプローチを追求するという戦略的なビジネス上の決定を下しました。この動きは、競争が激しく、ますますデジタル化するグローバル市場で優位に立つことを目的とするものでした。Liberty Mutual は、アマゾン ウェブ サービス (AWS) を利用して、同社のオンプレミスシステムをクラウドに移行し、会社全体のトランスフォーメーションをモダナイズして推進しました。
サーバーレスアーキテクチャを使用し、AWS に容量のプロビジョニングやパッチ適用などのインフラストラクチャ管理タスクを処理させることで、Liberty Mutual は運用上の負担を軽減し、大幅なコスト削減を実現しました。同社はまた、サーバーレスソリューションを利用して、より俊敏で質の高いアプリケーションを迅速に構築できるようにしました。サーバーレスアーキテクチャは、運用上のオーバーヘッドを排除することで、実験を促進します。これにより、チームは迅速にリリースして、フィードバックを取得し、反復してより早期に市場に投入することが可能となります。
「サーバーレス化により、当社のエンジニアリングチームの作業速度が上がりました」と、Liberty Mutual のテクノロジー部門のディレクターである Dave Anderson 氏は述べています。「サーバーレスの考え方の実験に関する経験が増えていくにつれて、より多くのフライホイール効果が見られるようになり、ビジネスパートナーの手に迅速に価値をもたらすことができたのです」
物事を理解するための私たちのコラボレーションは、顧客とベンダーの関係にとどまらないように感じています。AWS はまるで当社のチームの一員のように心から思えるのです」
Dave Anderson 氏
Liberty Mutual、テクノロジー部門のディレクター
将来を見据えた俊敏なグローバルビジネスを構築する
Liberty Mutual は、年間収益が 400 億 USD で、世界で 6 番目に大きな損害保険会社であり、業界における技術革新の先頭に立っています。同社は、2013 年に AWS におけるセキュリティとテストデータに関するソリューションの調査を開始しました。2015 年、Liberty Mutual は、AWS でサーバーレスジャーニーを開始しました。そのとき、同社の最高情報責任者である James McGlennon 氏は、Liberty Mutual がクラウドでより俊敏かつ顧客中心になるように尽力しました。同社は、以前はオンプレミスシステムを使用していましたが、それらを使用してイベント駆動型システムを作成するのは極めて複雑であることがわかりました。
しかし、サーバーレスコンピューティングを利用することで、Liberty Mutual のエンジニアは、イベント駆動型システムをより高速に構築できたのです。これは、フィードバックサイクルが高速化され、システムのイテレーションをより効率的に実行できるようになったためでした。「私にとって転機となった瞬間は、デベロッパーが 1 日に 10,000 行のコードを書くことは良い仕事であるとは言えない、と気付いたときでした」と Anderson 氏は述べています。「当社では『Code is a liability』(コードは負債である) というフレーズを使い始めました。これは、エンジニアやアーキテクトに、不要なときにはコードを書くべきではない、ということを注意喚起するものでした」 エンジニアリングチームは、その焦点を、構築の基本部分から、サーバーレスアーキテクチャのビルディングブロックを使用してビジネス価値を迅速に付加することに移しました。
Liberty Mutual は、サーバーレスインフラストラクチャへのモダナイゼーションの過程で AWS を利用することを選択しました。これは、AWS がエンジニアリングの経験や顧客中心のアプローチを採り入れるとともに、高度に規制された保険業界の最優先事項であるセキュリティに対して重点的に取り組んでいたことによります。
AWS でサーバーレスインフラストラクチャに移行する
Liberty Mutual は、サーバーレスインフラストラクチャへのトランスフォーメーションを絶え間ない旅であると考えています。初期段階で、同社はネットワークセキュリティやデプロイパイプラインなどのインフラストラクチャの基本要素を構築しました。第二のフェーズでは、アプリケーション開発をモダナイズし、サーバーレスファーストの原則に基づいて階層化しました。現在、Liberty Mutual ではサーバーレスファーストのポリシーを採用しており、エンジニアは最初にサーバーレスのソフトウェアまたは機能の構築に努めることが求められています。多くのサーバーレスファーストプロジェクトは既に完了しており、そのすべてにおいて AWS Lambda が利用されています。AWS Lambda は、企業が、管理をすることなく、あらゆるタイプのアプリケーションやバックエンドサービスのコードを実行することを可能にするサーバーレスコンピューティングサービスです。サーバーレスファーストのアプローチを使用することが不可能な場合、エンジニアリングチームは、クラウドネイティブオプション、またはフォールバックとして、Liberty Mutual が自社のレガシーワークロードのために依拠するコンテナソリューションを探すことになります。「これらは当社が 20 年をかけて開発してきたものなので、すぐに AWS Lambda に単純に書き直すつもりはありません」と Anderson 氏は述べています。「これらのワークロードをクラウドでコンテナ化することは、当社にとって大きなメリットをもたらします。クラウドでは、その周りにサーバーレスインフラストラクチャを構築できるのです」 現在、Liberty Mutual の半数を超えるワークロードがクラウドで実行されています。
2019 年、Liberty Mutual はサーバーレスコンピューティングを使用して、世界中のさまざまな事業を Financial Central Services (FCS) と呼ばれる、一元化された総勘定元帳に統合しました。これは、オンプレミスシステムで対応するには複雑過ぎるジョブでした。AWS Step Functions を使用する抽出、変換、ロードプロセスを作成しました。AWS Step Functions は、AWS Lambda 関数と複数の AWS のサービスをビジネスクリティカルなアプリケーションにシーケンスするためのサーバーレス関数オーケストレーターです。Liberty Mutual は、AWS Step Functions を使用して、イベント駆動型ワークフローを作成しました。このワークフローでは、各事業部門からのデータフィードが一連のイベント、つまり金融取引に変換され、その後に FCS に移行されます。現在、FCS は毎月末に 1 回の実行で 1 億件のトランザクションを処理します。つまり、1 か月の大部分はオフラインであるため、コストは発生しません。100 万件のトランザクションの処理にかかる費用はわずか 60 USD です。サーバーレスアーキテクチャの柔軟性と障害耐性により、障害が事実上なくなります。
Liberty Mutual は、新しいアプリケーションを迅速にデプロイできるように、AWS Cloud Development Kit (AWS CDK) を使用してソフトウェアアクセラレータを作成しました。これは、エンジニアが使い慣れたプログラミング言語を使用してクラウドアプリケーションリソースを定義できるオープンソースのソフトウェア開発フレームワークです。エンジニアはプログラミング言語である TypeScript を使用して、AWS CDK でテンプレートまたはサーバーレスパターンを作成します。これらのテンプレートを使用すると、コードを最初から作成することなく、プロジェクトを迅速に構築できます。このパターンはまた、スタッフがコラボレーションするための共通言語を提供します。クラウドの使用経験がほとんどない新入社員やエンジニアは、パターンを使用して着実に実行できます。2019 年から 2020 年にかけて、約 3,500 のサーバーレスパターンがデプロイされました。「大企業として、デベロッパーに『AWS Lambda をオンラインで検索して、何かをコーディングしてください』とは言いたくないのです」と Anderson 氏は述べています。「より緊密にサポートする必要があるのです」 そのため、同社は AWS 認定の取得においてエンジニアをサポートし、トレーニングと社内ワークショップを提供しています。Liberty Mutual は、エンジニアをサポートするために、AWS Well-Architected も使用しています。これは、クラウドアーキテクトがアプリケーションやワークロード向けに安全性、高性能、障害耐性、効率性を備えたインフラストラクチャを構築する際に役立つフレームワークです。
Liberty Mutual は、サーバーレスアーキテクチャを使用して、わずか 3 か月で複数のシステムを構築しました。これは、オンプレミスでは 1 年を要するものでした。あるケースでは、4 名のデベロッパーのチームが AWS CDK のサーバーレスパターンを使用して、予定より 3 か月早く、12 週間で馬と家畜の保険の販売および管理アプリケーションを構築しました。チームは浮いた時間を活用して、アプリケーションに付加価値を与えるビジュアルダッシュボードを作成しました。「AWS Well-Architected Review を使用して、製品の品質を極めて高いものとするためにより多くの時間を費やすことができます」と Anderson 氏は述べています。
サーバーレスファーストアプローチの成長を継続する
Liberty Mutual は、サーバーレスイベントバスである Amazon EventBridge を実装することを計画しています。これにより、独自のアプリケーション、統合された Software as a Service (SaaS) アプリケーション、および AWS のサービスからのデータを使用してアプリケーションを簡単に接続できます。Amazon EventBridge により、同社は独自のイベントバックボーンを構築する複雑さを軽減できます。
AWS でサーバーレスアーキテクチャを使用することにより、Liberty Mutual の俊敏性が向上しました。これにより、コストを削減し、スタッフによるインフラストラクチャメンテナンスの責任を排除しながら、より迅速なタイムラインで顧客に質の高いソリューションをリリースできるようになりました。Liberty Mutual のエンジニアリングチームに対する社内調査において、スタッフの不満とフラストレーションが軽減されていることが明らかとなりました。「チームはより主体的に業務に取り組むようになりました」と Anderson 氏は自らの観察に基づいて述べています。「より優れたツールセットを使用できるようになったため、チームは生産性が高まっていると感じているのです」
AWS のサポートにより、Liberty Mutual は、サーバーレスファーストアプローチのメリットを拡大し、享受し続けることが可能となっています。「物事を理解するための私たちのコラボレーションは、顧客とベンダーの関係にとどまらないように感じています」と Anderson 氏は述べています。「AWS はまるで当社のチームの一員のように心から思えるのです」
Liberty Mutual リファレンスアーキテクチャ
Liberty Mutual について
1912 年に設立された Liberty Mutual は、多様なサービスを提供する、アメリカのグローバル保険会社であり、世界で 6 番目に大きな損害保険会社です。2019 年の収益に基づくと、米国の大手企業の Fortune 100 リストで 77 位にランキングされています。
AWS の利点
- FCS システムで 1 か月に 1 億件のトランザクションを処理
- 100 万トランザクションあたりのコンピューティングコストを 60 USD に削減
- AWS CDK を使用して、1 年間で 3,500 を超えるサーバーレスパターンをデプロイ
- アプリケーションの構築時間を 1 年から 3 か月に短縮
- 2020 年に AWS でワークロードの 50% を実行するように増加
- エンジニアのオンボーディング時間を短縮
- スタッフのインフラストラクチャメンテナンスの負担を軽減
- システムの柔軟性と障害耐性の向上
使用されている AWS のサービス
AWS Lambda
AWS Lambda はサーバーレスコンピューティングサービスで、サーバーのプロビジョニングや管理、ワークロード対応のクラスタースケーリングロジックの作成、イベント統合の維持、ランタイムの管理を行わずにコードを実行できます。
AWS Step Functions
AWS Step Functions は、AWS Lambda 関数および AWS の複数のサービスを、ビジネスに不可欠なアプリケーション内に簡単に配列することができるサーバーレスの関数オーケストレーターです。
AWS CDK
AWS Cloud Development Kit (AWS CDK) は、使い慣れたプログラミング言語を使用してクラウドアプリケーションリソースを定義するためのオープンソースのソフトウェア開発フレームワークです。
AWS Well-Architected
AWS Well-Architected は、クラウドアーキテクトがアプリケーションやワークロード向けに高い安全性、性能、障害耐性、効率性を備えたインフラストラクチャを構築する際に役立ちます。
開始方法
あらゆる業界のさまざまな規模のお客様が、AWS を活用してビジネスを日々変革しています。AWS のエキスパートにお問い合わせのうえ、今すぐ AWS クラウドジャーニーを開始しましょう。