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三菱電機株式会社

創立 100 周年を迎えた三菱電機の

サービス開発に革新をもたらす新たな挑戦

イノベーションを推進するリーダーに求められる心構えとは

2021

若手メンバー中心でワークショップをオンラインで実践して、素早く実証実験。
そして、「高齢者向け見守りサービス」を新たにローンチ。

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次々と新サービスを生み出す Amazon / AWS を見ていて、アクティビティの仕組みに興味がありました。その中で、AWS の担当者から提案された Amazon の Working Backwards のメカニズムを社内に取り入れることにしました

朝日 宣雄 氏
三菱電機株式会社
執行役員 リビング・デジタルメディア事業本部
IoT・ライフソリューション新事業推進センター長

家電・設備機器の IoT 化推進に向け

共通プラットフォームを AWS 上に構築

日本を代表する総合電機メーカーとして、幅広い事業を展開する三菱電機。朝日氏が所属するリビング・デジタルメディア事業本部は、『霧ヶ峰』で知られるエアコン・換気扇・照明などの設備機器や、冷蔵庫・IH クッキングヒーターなどの家電製品を手がけています。2020年 4 月には IoT を活用した新たなアプリやサービスを推進する IoT・ライフソリューション新事業推進センターを設立し、朝日氏がセンター長に就任しました。

同事業本部が IoT ソリューションに取り組んだ背景には、2021 年の創立 100 周年に向けて三菱電機グループが一体となり、モビリティ、ライフ、インダストリー、インフラの 4 つの領域でソリューション展開していく方針を掲げたことにあります。ライフ領域を担う同事業本部は、クラウド上に構築したさまざまな付加機能を、スマートフォンや AI スピーカーなどで操作できるようにすることが価値の実現であると考え、機器情報やユーザー情報などを一元的に管理する IoT 共通プラットフォーム『Linova(リノヴァ)』をアマゾン ウェブ サービス(AWS)上に構築しました。

「個々の顧客に適した付加価値を個別に提供していく one to one ビジネスモデルへ変革するためには、開発者が効率的にニーズに向き合うことを可能とする共通プラットフォームが不可欠でした」(朝日氏)

IoT 共通プラットフォームの確立に合わせて、朝日氏は同事業本部内にクラウド推進組織(CCoE)を設置して自社のエンジニアで開発する内製環境を整えました。それにより、クラウド人材の育成が進み、社内の IT ガバナンスも強化されました。

「誰もが使える」家電作りを見直し

「個々に寄り添う」開発手法の獲得へ

横串の組織体制と IoT 共通プラットフォームで、他の事業部門や社外との連携が加速していく中、残されたもう 1 つの課題は、新事業を企画・開発・実行できるイノベーション人材の育成でした。これまでの製品作りは、誰もが使える最大公約数の機能を搭載し、大量生産でコストを下げ、多くの顧客に届けることを目指していました。世間のトレンド、競合他社の動向、自社技術の優位性アピールと対応すべきことが多く、個々のニーズに向き合うことは少なかったといいます。

危機感を抱いた朝日氏は、AWS のデジタルイノベーションプログラム(DIP)に着目しました。これは、常に顧客起点で行動する Amazon /AWS 独自のイノベーションメカニズムを体得するためのプログラムで、最初にプレスリリースを書いて FAQ を練り、ワークショップやレビューで検証する“Working Backwards”(逆算の解決法)のメカニズムを採用しています。

「次々と新サービスを生み出す Amazon / AWSを見ていて、アクティビティの仕組みに興味がありました。その中で、AWS の担当者から提案された Working Backwards のメカニズムを社内に取り入れることにしました」(朝日氏)

走りながらニーズをすくい取ることで

PoC を繰り返し、事業化を加速

Working Backwards では、テーマを「デジタルイノベーションによる新たな価値の提供」と設定し、BtoB で 2 チーム、BtoC で 2 チームの合計 4 チームで検討しました。メンバーは1 チーム約 8 名で構成し、ダイバーシティを意識して製造、販売、事業企画、研究所など幅広い部門から選抜。年齢も 30 代から 40 代と若手が中心です。

ところがワークショップを実施した 2020 年 3 月は、新型コロナウイルスが蔓延し始め、リモートワーク化が進んでいた時期です。慎重な意見もある中で朝日氏は、オンラインでの実施を決意しました。AWS にとってもオンラインによるワークショップはグローバルでも初めての試みとなりました。

全国各地の事業所をオンラインで結んだワークショップとプロトタイプの作成は順調に進み、6 月の最終発表を経て、4 つのアイデアから「高齢者向け見守りサービス」のアイデアが先行して採用されました。当初はコロナを意識していない課題設定でしたが、徐々に高齢者への影響や介護者の負担が議論されるようになりました。高齢者施設へのヒアリングを実施し、走りながらニーズをすくい取っていく中で、実現可能性が見えてきました。残りの 3つも順次リリースを予定しています。
現在は事業化に向けた実証実験中で、サービスローンチに向けて準備が進んでいます。最終的には空調・換気・空清などの機器と連携したクラウドソリューションとアプリをサブスクリプション型で提供する考えです。

「プロトタイプ開発では、AWS 上に構築した IoT 共通プラットフォームを活用し、内製開発を担うクラウドエンジニアとともに PoC を繰り返しながら事業化を加速させました。製造業では製造物責任(PL)法などの規制も意識する必要はあるものの、クラウドアプリの開発であれば変更が容易という考えのもと、柔軟な発想で検討しました」(朝日氏)

「卵を育て、ひなをかえす」を重視

出されたアイデアはすべてを面白がる

Working Backwards の実施に際し、朝日氏はリーダーとしてチームの活動を全面的に支援。メンバーにはこまめにメッセージを発することを心掛けたといいます。

「発想に制約を設けず、かつ考えていることが正しいかを常にチェックして、手を動かしながら最善の方法を考えて欲しいと伝えました。『卵を育て、ひなをかえす』ために、出されたアイデアはすべてを面白がり、オンラインでも密にコミュニケーションを取ることでメンバーを見守り続けました」

さらに、朝日氏は、メンバーが所属する部署の上長に対しては進捗状況を随時報告し、Working Backwards の意義を伝えることで安心して働ける環境を整備しました。さらに年に数回、本部長や事業部長などの幹部が集まり、新規事業や現状課題を話し合うソリューション会議でも、活動内容を毎回紹介してイノベーションに取り組むチームの本気度を事業部内に広く認知させたといいます。

「成果が形になり始めると、半信半疑だった社内の雰囲気は大きく変わりました。期待値が上がるにつれ、メンバーの士気も高まりました。社内に Working Backwards の思想を拡げたいと提案した際には賛同が得られ、新たなチャレンジは成功したと実感しています」

朝日氏のバックアップを受けて Working Backwards に取り組んだメンバーも、今までにない発想の方法やイノベーションのプロセスを学び、確実な手応えを得ているようです。ただし、身に付けたプロセスは活用しなければ意味がありません。各自の職場でもWorking Backwards の手法を使って、イノベーション活動を展開して欲しいといいます。結果として、“やらなければいけない仕事”から、“やりたい仕事”にシフトできると期待を寄せています。

今後は Working Backwards から学んだイノベーションのプロセスを、事業本部全体に拡げて他のアクティビティにも適用していきたいと朝日氏は構想を明らかにしています。

「アイデアを早期に形にするためには、Working Backwards のようなプロセスは必要不可欠です。AWS は Working Backwards を横展開するためのコーディネーター育成プログラムも用意しているそうなので、一緒にコラボレーションしながら三菱電機流のイノベーション人材を育てていきたいと思います。将来的には、IoT 基盤のグローバル化と並行して、Working Backwards の手法をグローバル拠点にも拡大していきます」


カスタマープロフィール:三菱電機株式会社

  • 設立 1921年1月15日
  • 代表執行役・執行役社長 杉山 武史 氏 
  • 事業内容 重電システム、産業メカトロニクス、情報通信システム、電子デバイス、家庭電器、その他

実施施策

  • 獲得したイノベーション手法の横展開
  • IoT 基盤のグローバル化とデジタルイノベーションプログラムのグローバル展開

ご利用の主なサービス

AWS プロフェッショナルサービス

AWS プロフェッショナルサービスは、AWS クラウドを使用して期待するビジネス上の成果を実現するようお客様をサポートできる、専門家からなるグローバルチームです。当社はお客様のチームおよび選任された AWS Partner Network (APN) のメンバーと協力し、エンタープライズクラウドコンピューティングの取り組みを実行します。

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AWS IoT

産業用、消費者用、商用ソリューションのための IoT サービス

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Amazon Kinesis

Amazon Kinesis でストリーミングデータをリアルタイムで収集、処理、分析することが簡単になるため、インサイトを適時に取得して新しい情報に迅速に対応できます。

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Amazon DynamoDB

Amazon DynamoDB は、規模に関係なく数ミリ秒台のパフォーマンスを実現する、key-value およびドキュメントデータベースです。完全マネージド型マルチリージョン、マルチマスターで耐久性があるデータベースで、セキュリティ、バックアップおよび復元と、インターネット規模のアプリケーション用のメモリ内キャッシュが組み込まれています。

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