プラス株式会社
目指すのは「アスリート体質」の実現
経営トップが AWS と共にチャレンジする全員参加の DX
2024
生き残りに不安を抱えながら社長に就任
同じ危機感を持つ社員と DX の推進に着手
DX で目指すべきは、将来どのような『やりたいこと』ができても、それに対応できる『アスリート体質』を作り上げることです。俊敏で柔軟な企業体質づくりのために、テクノロジーの活用と顧客中心のカルチャー醸成をトップがリードすべきだと思います。"
今泉 忠久 氏
プラス株式会社 代表取締役社長
コロナ禍の影響などにより
オフィス関連ビジネスに逆風が吹き荒れる
1948 年に設立され、2023 年に 75 周年を迎えたプラス株式会社。文具の卸売からスタートした事業は、文具製造や家具製造といったサプライチェーン上流に拡大し、さらにアスクルの創業など顧客満足の最大化のために既存の商流の仕組みを大胆に見直し変革も行ってきました。「過去の生業にこだわらず、常に新しい価値・満足を生み出していこうというのが、プラスの DNA です」と語るのは、代表取締役社長を務める今泉忠久氏です。
現在はオフィス関連の事業を幅広く手がけ、従業員数もグループ連結で約 8,100 名に上っています。
しかし 2020 年 7 月に社長に就任した時には、本当に会社が存続できるのか、強い危機感があったと振り返ります。
「当時はコロナ禍が始まった頃で、ペーパーレス化が一気に進み、オフィス不要論も議論され始めていました。またそれ以前から生産年齢人口が減少しており、これもオフィス関連ビジネスにとって大きな逆風になっています。もう既存ビジネスでは生き残れないかもしれない、とすら考えていました」
このような危機感の中、今泉氏が最初に行ったのは、社内の現状に目を向けることでした。以前は常に「外向きの姿勢」でビジネスを展開し、常に先へ先へと進んでいた会社でしたが、その足元を改めて見つめ直すことにしました。その過程で明らかになったのが、さまざまな「非効率」の存在でした。
「会社の成長に伴い社内カンパニーが増えており、それぞれ個別のシステムを保有していました。これらは個別最適な形で運用されており、会社全体で新しい取り組みを進める際の足枷になっていたのです。まずはこの状況を変え、『One PLUS』を実現しなければなりません。同じ危機感を持つ仲間と共に、 DX を進めることにしました」
アスリート体質の 3 つのキーワード
実現のパートナーに AWS を選択
2020 年 8 月には社長直轄の形で DX への取り組みをスタートしました。その基本的な考え方について、今泉氏は次のように語ります。
「世の中では『まずやりたいことを明確にしてから DX に取り組むべき』『DXは手段であり目的ではない』という議論が一般的だと思いますが、私自身はそうではないと考えています。5 年先すらわからない世の中で、その先に何を目指すべきなのか、本当に語れるわけがないからです。では、どうすべきなのでしょうか。それは、20 年後にどんな『やりたいこと』が出てきても、それに向かって素早く動ける『アスリート体質』を作り上げることです。体幹や筋肉、それらを動かす運動神経がしっかりしていれば、どんなスポーツでもやり遂げられるはずです。実際にどのスポーツをやるのかは、体質を身につけてから選べばいい。これが DX に対する私の基本的な考え方です」
では「アスリート体質」とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。そのキーワードとして挙げたのが、「フレキシビリティ」「アジリティ」「ローコストオペレーション」です。そのためには、システム、業務、組織、人といったさまざまな面で変革を進める必要がありますが、社内にその知見がなかったため、まずは外部の有識者からの提案を募ることになります。複数のコンサルタント、シンクタンク、IT ベンダーに声をかけ、コンペティション形式で参加してもらいました。このコンペで最終的にパートナーとして選ばれたのが アマゾン ウェブ サービス(AWS)でした。
「AWS の提案はそれまでの提案とは全く異なるものでした。他の会社は具体的な『あるべき姿』と『未来の顧客体験やビジネスモデル』を提示していたのですが、AWS からは『事業や顧客を最もよく知るプラスが自分自身で考えてください。AWS は、Amazon 自身が事業会社としてさまざまな変革を起こして学んできた知見やノウハウを全面的に提供することで、プラスがアスリート体質になる変革に伴走します』と言われたのです。この提案を受け、「自分の会社の未来の事業を作るのを他人に委ねるべきではない」と気づき、目が覚める思いがしました。すぐに AWS の長崎社長とも面談し、『プラスがやろうとしていることは 、私たち AWS にとっても大変有意義なチャレンジ』という力強い言葉をいただき、一緒に走り出すことに決めました」
大きく 2 つの内容で DX を推進
2028 年までに基幹システムを
AWS 上でモダナイズ
ここからプラスの DX は、大きく 2 つの内容で進められていくことになります。
1 つは既存システムの改善をめざす「現状改善プロジェクト」です。AWS プロフェッショナルサービスの支援を受け、長年の歴史で社内カンパニーや子会社ごとにサイロ化された組織、システム等の現状把握から開始しました。グランドデザインと実行計画を策定後、約 40 名のプラス社員と AWS メンバーで編成されたデジタル統括部門を設置しました。開発手法としては、すべてのチームメンバーが同時に同じタスクに取り組む「モブプログラミング」を採用。社内のエンジニアが複数のチームに分かれ、アジャイル開発によって社内システムのマイクロサービス化を進めています。
「社内の開発者が自分たちでどうあるべきか考え、API を活用したエコシステムを AWS 上に作りつつあります。これによって、以前は 2 年かけて全体を作り上げていたシステム開発のあり方が、1 機能 1 週間で作って事業側のフィードバックを得てより良いものを作る、といった俊敏なものに変化しました。このようなスピード感のある開発は、内製でなければ不可能でした」
もう 1 つは、2028 年以降の「アフターDX」を見据えた取り組みです。それぞれの業務現場が顧客や市場の変化を察知し、その上で何を行うべきかを考えられるという企業文化を作り上げようとしているのです。
「エコシステムが完成した後に何を行うのか、まだ何も決まっていません。しかし DX によってどのような可能性が生まれるのかは、ぜひとも全社員に理解して欲しい。そのために社内ポータルで DX に 関する情報を動画などで発信しつつ、業務現場の責任者を巻き込みながら、DX の輪郭を明確にする作業を進めています。
また IT に詳しくない社員にも理解しやすいように、社内のさまざまな業務に関する『DX による課題解決のヒント』を 4 コマ漫画にまとめたコンテンツを作成し、今後400近いマンガを発信していきます」
DX はシステムではなく経営の重要課題
社長が深く関与しない DX はありえない
このような取り組みと並行して、アフターDX に実現可能な新規事業のタネを全社員から募る「次世代コアビジネス創造プログラム」もスタート。その一環として「スプリント」と呼ばれるアイディアソンを開催しています。
「2021 年に『スプリント 1』を実施し、3 年間で『スプリント 3』まで進んできました。これらに共通するテーマは『顧客志向で考える』『大きく変える』『失敗を恐れない』というものであり、その先生役を務めてくれたのも AWS のプロフェッショナルサービスのみなさんです」
これらのスプリントから、新たなビジネススキームも生まれ始めています。その 1 つとして今泉氏が挙げるのが、2023 年 12 月にスタートした「タベレル」です。アフターコロナでオフィスの在り方と働き方が変わった背景から、会社と従業員双方の顧客体験向上に着目した事業です。最新の冷凍技術を活用し、「会社で、本格的なグルメをタベレル」体験を提供しています。最近では在宅勤務に慣れた社員がオフィスに戻ってこないと悩む経営者が増えていますが、これまでになかった魅力のあるオフィスにすることで社員が戻り、生産性向上やコミュニケーション活性化につなげられると期待されています。
このような新たなビジネスを立案する上で重視しているのは、「顧客体験を深く考え、新たな価値を提供する」ことに加え、取引先や社員、社会をハッピーにできることだと今泉氏は語ります。「三方良し」ならぬ「四方良し」を意識することで、「社会最適」を目指していくと言います。
「DX はシステムの話ではなく経営そのものであり、間違いなく社長が担うべき仕事の 1 つです。そのために、DX 推進の現場と緊密に連携しながら、私自身がその内容を深く理解しようと務めています。社長が深く関与しない DXはありえません」
企業概要 プラス株式会社
- 代表取締役社長 : 今泉 忠久 氏
- 従業員数: 1,430 人、連結:8,157 人(2022 年 12 月 31 日現在)
- 事業内容: オフィス家具、オフィスインテリア用品の製造・販売 ・文具、事務用品、OA・PC 関連商品、事務機器の製造・販売・オフィス環境のデザイン・施工・内装工事・電気工事・管工事 ・電子光学機器、教育機器の製造・販売、日用雑貨品、食料品、ソフトウェア、書籍の販売
実施施策
- AWS を活用した既存システムのマイクロサービス化
- 次世代コア事業を生み出すためのカルチャー変革
ご利用の主なサービス
AWS Professional Services
AWS クラウドを導入すれば、持続的なビジネス上のメリットが得られます。特殊なスキルと経験をチームに加えれば、結果を達成するのに役立ちます。AWS プロフェッショナルサービスは、AWS クラウドを使用して期待するビジネス上の成果を実現するようお客様をサポートできる、専門家からなるグローバルチームです。
Amazon Lambda
AWS Lambda は、サーバーレスでイベント駆動型のコンピューティングサービスであり、サーバーのプロビジョニングや管理をすることなく、事実上あらゆるタイプのアプリケーションやバックエンドサービスのコードを実行することができます。
Amazon Elastic Container Service
Amazon Elastic Container Service (ECS) はフルマネージドのコンテナオーケストレーションサービスであり、コンテナ化されたアプリケーションをより効率的にデプロイ、管理、スケールするのに役立ちます。
Amazon Location Service
Amazon Location Service を使用すると、デベロッパーは、データセキュリティやユーザーのプライバシーを犠牲にすることなく、マップ、Points of Interest、ジオコーディング、ルーティング、追跡、ジオフェンシングなどの位置情報機能をアプリケーションに簡単に追加できます。
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