株式会社スギ薬局
トータルヘルスケア実現を目指しデジタルをフル活用
新世代のトップ経営者が見据える DX とその未来
2021
DX をさらに加速するため基幹システムをクラウド化
併せて、「DX 戦略本部」を立ち上げ、自らトップとして采配。
デジタルを使い倒すことができれば、人のチカラをもっと引き出すことが可能になります。一人ひとりがより専門性の高い知識やスキルを身につけることで、目の前のお客様にきめ細かく接することができます
杉浦 克典 氏
株式会社スギ薬局
代表取締役社長
トータルヘルスケア実現に向け
重要な役割を担う DX への取り組み
私たちが健康的な日々を送る上で、いまや欠かせない存在となったドラッグストアや調剤薬局。なかでもドラッグストア業界は 2000 年からの 20 年で、市場規模が 3 倍へと急速に成長しています。その一方で上位企業の寡占化が進み、競争環境は厳しさを増しています。このような市場において「トータルヘルスケア戦略」を掲げ、急速な成長を続けているのがスギ薬局です。
「薬剤師だった私の両親が 2 人で創業してから 45 年、一貫して地域の健康に役立ちたいという想いでビジネスを進めてきました。その後、調剤併設型のドラッグストア事業を展開し、2021 年 2 月末現在で 1,391 店舗を展開しています」と語るのは、スギ薬局 代表取締役社長であり、スギホールディングスでも代表取締役社長を務める杉浦克典氏です。
「地域の皆さまの健康に貢献するには、調剤やドラッグストア事業だけではなく、セルフケア領域から医療服薬領域、介護・生活支援領域まで、幅広い取り組みが必要です。そのため当社では『トータルヘルスケア戦略』を掲げ、一貫したケアサイクルの中での健康増進の実現を目指しています」(杉浦氏)
この戦略推進を支える柱の 1 つとして重要な役割を担っているのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みです。
スギ薬局ではこれまでにもすでに、顧客に合わせた最適な接点を持つための「スギ薬局アプリ」や健康増進を支援する「スギサポ」、化粧品電子カルテ「Carat」の導入・展開を進めています。またスマホ型店頭端末「PIT」による業務改善や、AI 活用によるマーチャンダイジング業務の最適化などにも取り組んできました。「スギ薬局アプリ」は 2021 年 2 月末現在でダウンロード数 600 万人に達しており、2022 年度末までにダウンロード数 1,000 万人を目指しています。
「私自身が主導する形で 2017 年頃から DX戦略を進めており、成果が出始めています。しかしお客様の体験をさらに高め、トータルヘルスケアを実現していくには、これまでのペースでは十分ではありません。3 年間 1 つひとつ積み重ねてきた成果を活かしながら、さらに速いスピード感で DX を推進する必要があります」(杉浦氏)
巨大 EC を支える実績を評価し
その知見と強靭な基盤に期待
このような DX のスピードアップを支える上で、重要な土台となるのが基幹システムです。スギ薬局では年間 120 店舗以上の急速な店舗拡大を進めているため、増え続けるデータにどう対応するかも重要な課題となっていました。そこで同社が決断したのが、基幹システムのクラウド化でした。
これまでスギ薬局はパートナーが提供していた SaaS を活用していましたが、そのサービスの提供が終了することで 2018 年の秋にリプレースの検討を開始。さまざまな検討を重ねた結果、AWS へ移行することを決定しました。基幹システム稼働に必要な環境を AWS で整備した上で、2020 年 4 月には移行作業に着手。現在はテストを進めている最中であり、2021 年 9 月には AWS 上での本番稼働が始まる予定となっています。
「基幹システムの基盤を社内で構築し、必要に応じて拡張していくことも可能であるものの、そのためには時間もお金もかかります」と杉浦氏は話します。このような問題を回避し、ビジネスの成長に合わせた柔軟な拡張性を担保するには、クラウドを活用するのが適していると判断しました。「また DX を推進するには、社外パートナーとの連携も必要になります。このような接続性を考えた場合でも、クラウドの方が優位だと考えています」(杉浦氏)
その理由として杉浦氏は、AWS は Amazon.com という巨大な EC サービスを支え続ける存在であり、その実績にもとづく知見や強靭なシステム基盤に、大きな期待を寄せているからだと説明します。移行に先立つアセスメントでは、AWS Migration Acceleration Program(MAP)を活用しており、クラウド化に向けた ロードマップ策定に AWS の知見が活かされています。もちろん AWS の大量データを迅速に処理できる能力や、柔軟な拡張性、安全性を担保できる構成であることなども、このプロジェクトの担当者によって評価されていると語ります。
デジタルをフル活用して
人のチカラをさらに引き出す
基幹システムの AWS 移行に加え、2021 年 3 月には「DX 戦略本部」を立ち上げ、自らその組織のトップとして杉浦氏は采配を振るっています。今後 DX を加速していくには、2 つの観点からデジタル技術を「使い倒していく」文化を根付かせていく必要があると指摘します。
1 つ目は、デジタルによる「省力化」です。これはより少ない労力によって、より多くのアウトプットを生み出すことを意味します。そのためには RPA や AI の活用が重要になるといいます。
2 つ目の観点は、デジタルによる「増力化」です。これは顧客を向いた DX であり、既存顧客の体験を高めることでもっとファンになってもらうとともに、これまで手掛けて来なかった領域に参入することで、新たな顧客を開拓していくことを意味しています。つまりビジネスそのものの力を増幅し、より大きな成長の原動力を生み出すための DX だといえます。
「当社はもともとアナログな会社であり、店に商品を並べて接客するという、人のチカラに依存した商売を 45 年間続けてきました。しかしデジタルを使い倒すことができれば、人のチカラを今まで以上に引き出すことが可能になります。一人ひとりがより専門性の高い知識やスキルを身につけることで、目の前のお客様にきめ細かく接することができます。このような使い方ができれば、デジタルは大きな価値を発揮するようになります。DX はただ単に機械を入れればいいというものではありません」(杉浦氏)
もちろんそのためには、デジタル技術を活用する社員一人ひとりの発想転換が求められます。社内での生産性向上はもちろんのこと、社外のパートナーと連携した新たな価値の創造にも、積極的に取り組んでいく必要があるからです。
「そのための取り組みもすでに進めています。例えば DX 戦略本部には 60 名を超えるメンバーがいますが、業務などの提携を行っているパートナーを中心に、積極的な人材交流を行っています。社外で聞いた話を社内にフィードバックし、それを皆で共有しながら、新たな発想や文化を醸成しつつあります」(杉浦氏)
社外のさまざまな組織と連携しながら
リアルとデジタルの融合を推進
このような取り組みの相手の中には、AWS も含まれていると杉浦氏は説明します。基幹システム移行プロジェクトのメンバーを中心に、多くの社員が AWS の担当者と交流しているといいます。
「AWS は多くの実績があり、DX をどう進めていくべきか、成功させるにはいかなる環境を整備したらいいのかなどの知見があります。そのどれをとっても、当社にとって不可欠な情報であり、ぜひ支援していただきたいと考えています」(杉浦氏)
今後はクラウド化した基幹システムを軸に、リアルとデジタルの融合を進めていくことを視野に入れています。例えば、ポイント会員の情報統合を行う事で多様なアプリの連携を実現することや、地域のクリニックとの患者様カルテ情報の共有によって、ポリファーマシー(必要以上の医薬品を服用している状態)を解消することなどが検討されています。
「トータルヘルスケアを当社だけで実現することは困難です。自治体や病院、検診施設、健保組合、介護サービス事業者、さらにはスポーツクラブや大学などの研究機関など、さまざまな方々との連携が求められます。AWS 上で動く新しい基幹システムは、このような連携を支える上でも重要な役割を果たすものになると期待しています」(杉浦氏)
カスタマープロフィール:株式会社スギ薬局
● 代表取締役社長 杉浦 克典 氏
● 従業員数 6,182 名(2020年 2 月末現在)
● 事業内容 在宅医療にも対応した、地域連携・地域密着型ドラッグストアの運営
実施施策
● 基幹システムを AWS でクラウド化
● クラウド化に向けたロードマップ策定に MAP を活用
● 「DX 戦略本部」も設置し DX への取り組みを加速
ご利用の主なサービス
AWS Migration Acceleration Program (MAP)
AWS Migration Acceleration Program (MAP) は、移行の工程に取り組む企業が、既存のワークロードをアマゾン ウェブ サービスに移行することで、ビジネス上のさまざまなメリットを得られるよう作成されました。MAP はコンサルタントサポート、トレーニング、サービスクレジットを提供するために始めたもので、クラウドへの移行のリスクを軽減し、強固な運用基盤を構築し、移行の初期コスト軽減の役に立つことを意図しています。
Amazon Aurora
Amazon Aurora は、MySQL および PostgreSQL と互換性のあるクラウド向けのリレーショナルデータベースであり、従来のエンタープライズデータベースのパフォーマンスと可用性に加え、オープンソースデータベースのシンプルさとコスト効率性も兼ね備えています。
Amazon EC2
Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) は、安全でサイズ変更可能なコンピューティング性能をクラウド内で提供するウェブサービスです。ウェブスケールのクラウドコンピューティングを開発者が簡単に利用できるよう設計されています。
Amazon S3
Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) は、業界をリードするスケーラビリティ、データ可用性、セキュリティ、およびパフォーマンスを提供するオブジェクトストレージサービスです。